開発ストーリー2026年3月12日·6分で読める

完全ペーパーレス化は正解?!あえて「紙で印刷できる」機能を実装した理由

完全ペーパーレス化は正解?!あえて「紙で印刷できる」機能を実装した理由
#介護アプリを作っているのに#なぜ「紙(pdf)」の印刷機能を実装したのか?高齢ヘルパーのitへの抵抗感や#訪問介護特有の「スマホ禁止」のリアルな事情から見えた#現場に寄り添うシステムのあり方#未経験の個人開発者が語る開発裏話

初めまして。コードが書けない個人開発者です

こんにちは。介護記録AI支援アプリ「Lily∞Care」を開発している、えーちゃんです。

僕は、プログラミングのコードは1行も書けません。それでも、「何を作るか」「なぜ作るか」を決めるのが自分の仕事だと思っています。1人の構想と、AIという実行力。この2つを掛け合わせることで、現場の声を拾い「こうあるべき姿」を設計しています。

余計な工程を省き、思考と実装を直結させながら、目の前の課題を一つずつ過去のものにしていく。そんなスタイルで、Lily∞シリーズを1人で企画・設計・運営しています。

介護業界についてはまったくの未経験で、外から来た人間です。だからこそ、業界の常識に縛られずに「なんでこうなっているんだろう?」と疑問を持ち、フラットな視点でアプリを作れると思っています。

今回は、デジタル化が叫ばれる今の時代に、僕があえてアプリに「紙(PDF)で印刷できる機能」を実装した理由についてお話しします。

介護のDX化が進まない、現場のリアルな理由

アプリを作っているというと、「すべての業務をスマートフォンやタブレットで完結させて、完全ペーパーレス化を目指すんですよね?」と思われがちです。

でも、僕が今回実装したのは、アプリに入力された記録や指示書を、簡単に「紙」としてPDF出力できる機能でした。一見すると、デジタル化の流れに逆行しているように見えるかもしれません。

なぜ、そんな機能を作ったのか。理由はとてもシンプルで、「介護現場に関わる人たちの状況に合わせるのが一番だ」と考えたからです。

介護の現場で働いているヘルパーさんの中には、若い方もいれば、ベテランでご高齢の方もいらっしゃいます。もちろん、普段からスマートフォンを触る機会も増え、IT機器への拒否感や苦手意識はずいぶんと少なくなってきたとは思います。

しかし、昨日までずっと紙でやってきた業務を、「今日から全部このアプリに変更します」というのは、あまりにも流れが急すぎます。

そもそも人間は、変化を好まない生き物です。「できるだけ現状維持でいたい」という心理が働くところに、無理やり新しいシステムを導入しようとすれば、強い抵抗を覚えるのは当然です。

経営者や事業所のトップダウンで「今日からDXだ!」と強制したとしても、現場のスタッフが対応しきれず、結果的に離職者が出てしまうようなことになれば本末転倒です。介護業界でDX化がなかなか進みづらいと言われているのは、実はこういった背景があるのではないかと思っています。

だからこそ、アプリにしてスムーズに対応できる人はそれで良いし、「やっぱり紙でやりたい」という人は、今まで通り紙で管理すればいい。現場に「選択肢」を残すことが、最も優しいデジタル化の第一歩だと考えました。

「スマホを触ると遊んでいると思われる」という特殊な事情

紙を残すべき理由は、ヘルパーさんのITリテラシーや変化への抵抗感だけではありません。業界未経験の僕にとって非常に驚きだったのが、訪問介護ならではの「特殊な事情」でした。

訪問介護では、ヘルパーさんがサービスを提供するために、利用者さんのご自宅へ上がります。しかし、利用者さんの家の中では「スマートフォンをいじることは禁止されている」という暗黙のルールのようなものがあるのです。

最初は不思議に思いました。スマホに仕事の指示書や記録アプリが入っているなら、それを見ながら作業をするのが効率的ではないかと。

しかし、現実の現場は違いました。仮にスマートフォンのアプリの中で業務の指示書を見ていたとしても、利用者さんから見れば「サービスをしに来てくれているヘルパーが、携帯を見て遊んでいる」と思ってしまう方がいるからです。

ご高齢の利用者さんにとって、スマホの画面を見つめている姿が仕事をしているようには見えない、というのは十分に理解できる話です。

そのため、基本的に利用者さんの家に上がっているときは「アプリは開かない」「スマホは触らない」という約束事がある。そうなると、業務内容を確認するために「紙」の指示書が絶対に必要になります。

この事実を知ったとき、現場で使えるアプリを作るためには「PDFで出力して紙に印刷できる機能」が絶対に必須だと確信しました。

サ責の負担を減らす「枯れた技術」という選択

紙が必要だという現場の事情はわかりました。しかし、だからといってサービス提供責任者(サ責)さんが、わざわざ印刷するためだけに、別のソフトへ内容を書き写したり、レイアウトを整えたりする手間をかけるのは間違っています。

僕が目指したのは、アプリの画面から「ただただ印刷すればいいだけ」のシンプルな仕組みです。ここで、開発者としての「技術選定」の判断がありました。

世の中には、PDFを出力するための高度で多機能なプログラムの部品(ライブラリ)がたくさん存在します。最初はそういった立派な技術を使うべきかと考えました。

しかし、最終的に僕が選んだのは、ブラウザに最初から標準装備されている機能(window.print())を呼び出すという、ごくごくシンプルで“枯れた技術”でした。

「え、それだけ?」と思うかもしれません。しかし、印刷時の改ページやレイアウトの区切り(ブレークポイント)さえしっかりと綺麗に設定しておけば、どんなアプリケーションを使って印刷しても結果は変わりません。

標準装備されているもので十分に目的を果たせるのであれば、多機能で重たい仕組みなんて全然使う必要がないのです。

技術選定というのは、無駄に高機能でいいものを選べばいいというわけではありません。「自分の目的(今回で言えば、綺麗なPDFを出力すること)を果たせるかどうか」という一点で判断すれば十分なのです。まさに、シンプル・イズ・ベスト。これが、無駄な工程を省いて思考と実装を直結させる僕の開発スタイルでもあります。

目の前の課題を、一つずつ過去のものに

最新のデジタル技術を詰め込んで、すべてをペーパーレスにすることが、必ずしも現場のためになるとは限りません。「やっぱり紙じゃないと困る」という現場のリアルな声と状況に向き合った結果が、今回のPDF出力機能の実装につながりました。

僕は介護の現場で働いたことはありませんが、だからこそ「システムはどうあるべきか」をフラットに考えられると思っています。1人の構想とAIという実行力があれば、現場の「困った」をすぐに形にして解決することができます。

これからも、現場の皆さんの声を拾い上げながら、書類業務やアナログな手間といった目の前の課題を、一つずつ過去のものにしていきたいと思っています。

Written by

えーちゃん

えーちゃん

SimpleFast株式会社 代表 / プロダクトデザイナー

コードは1行も書けないが、「何を作るか」「なぜ作るか」を 決めるのが自分の仕事。1人の構想とAIという実行力で、現場の声を拾い「こうあるべ き姿」を設計する。余計な工程を省き、思考と実装を直結させながら、目の前の課題を 一つずつ過去のものにしていく。Lily∞シリーズを1人で企画・設計・運営中!